約1.9倍!?歯がない高齢者はアルツハイマーになるリスクが高いって本当?
お口の中の状態が、さまざまな病気と密接に関わっていることが最近の研究でどんどん明らかになっています。65歳以上の高齢者のうち、歯がほとんど残っていない人は、20本以上歯が残っている人に比べて、認知症発症のリスクが約1.9倍も高くなるとの研究結果も。丈夫な歯を長く保ち、心身ともに健康な老後を送るために、どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか?
歯周病菌がアルツハイマーの原因になる?
アルツハイマー型認知症は、認識や記憶、判断する力が弱まり、生活に支障をきたす「認知症」として最も一般的なものです。この病気は、特定の物質が脳内に蓄積することで正常な神経細胞が破壊され、脳の萎縮が起こる「脳の炎症」が原因とされています。
一方、歯周病は、日本人の成人の8割以上がかかっているといわれているほど多い歯茎の病気で、歯肉などの口の中の組織に、歯周病の原因菌が感染することで始まります。その感染によって起きた「歯茎の炎症」は、進行すると歯がぐらぐらして抜けてしまうほどのものに。そしてその炎症は、口腔内に留まらず全身に影響を及ぼします。そのため、歯周病にかかっている人は、心筋梗塞などの心疾患や糖尿病にかかりやすくなることが知られています。
このふたつの病気は一見、関連性がなさそうに感じますが、歯周病の原因菌や歯周病によって起こる炎症反応が、アルツハイマー型認知症と関わっている可能性が指摘されているのです。
45歳以上の歯を失う原因は「歯周病」が最多
大人の歯(永久歯)は一般的に28本。40代を過ぎると徐々に減ってしまい、60代では約20本、70代で約17本、80代では約10本残っているのが平均です。
2005年に厚生労働省によって行われた抜歯原因調査では、
・歯周病 42%
・虫歯 32%
となっており、実は、歯を失う原因は虫歯より歯周病のほうが多いことがわかります。
45歳から54歳になると、半数近くが歯周病または歯周病予備軍となり、年齢が上がるにつれて、重度の歯周病にかかっている人の割合も増えていきます。
それだけかかる人の多い歯周病ですが、若いうちから予防や適切な治療をしていくことで、後々、歯を失うリスクを減らすことができます。
まずは、現在のお口の状態をチェックしてみましょう。
【歯周病チェック】
□ 歯肉が赤くなっている。
□ 歯をみがくと、歯肉から血が出る。
□ 朝起きたとき、口の中がネバつく。
□ 歯が浮くような感じがする。
□ 口臭を感じることがある。
□ 歯肉に痛みを感じることがある。
□ 歯が前より長くなったような気がする。
ひとつでも当てはまれば、歯周病予備軍の可能性があります。歯科医院で一度診てもらいましょう。
歯周病を予防する「たった3つの簡単な方法」
それでは、歯周病を未然に防ぐにはどのようなことに気をつけていけばいいのでしょうか?
■正しい歯磨き
正しいブラッシングを毎日行うことで、原因となるプラーク(歯垢)を減らします。プラークがたまるとブラッシングでは取れない歯石になってしまいます。それぞれ磨き方や歯並びにクセがあり、正しいブラッシングはなかなかできていないもの。歯科医院で指導してもらうのもひとつの方法です。
■生活習慣の改善
歯周病にかかりやすい生活習慣として、「喫煙」「間食が多い」「睡眠不足」「ストレスをためやすい」「よくかまずに食べる」などが挙げられています。このような生活習慣を改めることで、歯周病のリスクを減らすことができます。
■定期的なチェックとメンテナンス
どんなにきっちり歯磨きをしていても、プラークや歯石は次第に付着していきます。そのため、必ず行っておきたいのが歯科医院での定期検診です。3か月~半年に1回、歯科医に診てもらうことで、早期発見・早期治療のきっかけとなります。定期検診と同時に、プラークや歯石を取り除くクリーニングをしてもらうとベストですね。
歯周病とアルツハイマーの関連から考えても、早いうちからしっかりケアをして、歯を残すことが健康寿命につながるといえます。医学の発展によって実現した長寿に「お口の健康寿命」が追いつくよう、正しいブラッシングや生活習慣の見直し、そして歯科医院での定期検診などで、歯周病を予防していきましょう。